第20回

ARTの世界を旅する『imagine…』

*2006-2007年 英国のfree週刊紙「UK JACK」にて掲載されていたものです。写真は一部加工されています。

そもそもARTとは何だろう?

作家の魂が宿った「作品」はARTだと、

『imagine…』を見てテレビッコは思った。

『imagine…』は、BBCの名演出家Alan Yentobが自ら出演し、

様々なARTに関する話を紹介するドキュメンタリー番組だ。

2003年から毎年、ポツリ、ポツリと良質なドキュメンタリーを届けている。

「ARTに関する」と一口に言っても、その内容は多岐にわたる。

今シリーズのラインナップは、

  1. 現代美術家Gilbert  And Georgeの作品について。彼らの作品に込めた思いと、私生活を含め、制作過程を紹介。
  2. 1938年ナチスによって盗まれたクリムトの絵の奪還までを追ったドキュメンタリー。
  3. ミュージシャンScoot Walkerの活動。
  4. 現在the Victoria and Albert Museumで開催中の展覧会「Surreal Things」を題材にしたSurrealismとは?だった。
  5. 7月にOA予定の5話目は、バーチャルバンドGorillazでも手を組んだ2人、ロック歌手Damon Albarnと、「TANK GIRL」を手がけた漫画家Jamie Hewlettの共同制作の様子を追った話らしい。

Yentob自身が明確に伝えている様に、

『imagine…』は、ポップカルチャー作品と、

いわゆる芸術作品を区別する事なく、ARTと捉える。

そして作者や関連する人々の生き様を丁寧に取材するのだ。

共通して言えることは、ポップカルチャーの作品にも、

芸術作品にも作り手の思いが強く反映されていることと、

そんな入魂の作品に心動かされた人々がいるという点だ。

テレビ番組はとかく消費物と思われる。

日々、次から次へと画面に流される映像は間違いなく大量生産的消費物の臭いがする。

事実、画面の向こうで制作しているTVディレクター達も、自分の番組は「作品」ではないと思う事もあるだろう。

但し、Yentob的視点でみれば、そこに作り手の思いが強く込められているのなら、

そして、番組を見て心動かされた人がいるのなら、

テレビ番組も限りなくARTの領域に近づく。

少なくとも、Yentobの「ARTに関する良質なドキュメンタリーを放送したい」

という思いが凝縮されている『imagine…』は、

それ自体でYentobの「作品」と言えると思う。

コンセプトが今イチよくわからないゲイジュツ作品が街にあふれる今日この頃、

根本的な動機をハッキリと伝えてくれるこの番組は貴重な「作品」だと、

テレビッコは思う。

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