第17回

外メシの旨味 『The Hairy Bikers Ride Again』

*2006-2007年 英国のfreem週刊紙「UK JACK」にて掲載されたものです。写真は一部加工されています。

 野性的おでぶ食いしん坊ちゃん万歳!

 『The Hairy Bikers Ride Again』を端的に言えばこんな感じ。

2004年から始まったThe Hairy Bikersシリーズ。

毎回、ヒゲぼうぼう、たぷたぷ腹のSimon KingとDavid Myersは

美味いものを求めバイクで世界各地を旅する。

バイク旅と聞くとBorn to Be Wildの曲と共に馳走するEasy Riderが浮かぶが、

SiとDaveの旅は至って平和な食探訪記。

走っては食べる。

市場に行ったら味見する。

インドで古典舞踊を踊ったら腹が減るから食べる。

街で見た旨そうな物が食べたいから作る。

作ったら勿論食べる。

とにかく食べる。

この上なく美味そうに。

作る時はいつも太陽の下。

メキシコのマリアッチの調べに合わせて。

或は壮大な遺跡をバックに。

時に大河の流れに身を任せつつ。

なんと贅沢な食卓。

2人の野性的な食いっぷりは人間の食への本能を呼び起こす。

  日本で石塚英彦さんとパパイヤ鈴木さんの

「元祖!でぶや [debuya]」ファンだったテレビッコは諸手を挙げて『The Hairy Bikers-』を歓迎した。

食に対する愛情に等しく、SiとDaveの掛け合いは、石ちゃんとパパイヤさんのそれと同じ位絶妙だ。

「笑いのツボを心得ている。この2人、只者ではないな」と思ったら案の定!

2人共、映画やTVで裏方として多才な経歴を持つ。

BBCによればSiは助監督などを務め、Daveはメイクアップアーティストをしていたとか。

そして2人が出会ったのは、あるTVドラマのスタッフとして。

つまりSiとDaveは作り手としての楽しみをスタッフと共有しつつ、

カメラの前で食いしん坊ぶりを披露する術も熟知しているのだろう。

ファインアートの学位を持つDaveは料理の盛りつけにもこだわりを見せる。

そんな2人がプロ並みの料理の腕を持つに至ったのは、

ロケ弁(屋外での映画・TV収録時に出るお弁当)の不味さに耐え兼ねての所為か、

純粋に料理好きだからなのか真意は解らない。

が、間違いなく彼らの食&調理に関する知識と探究心はシェフレベル。

但し、2人の料理の腕前がプロ級でもやってはならぬ事がある。

それはTVのスタジオ内で料理をする事。

現シリーズが始まる直前、宣伝も兼ねてBBC土曜朝の『Saturday Kitchen』に生出演し、

スタジオのキッチンセットで料理を作った。

「似合わない!」

スタジオと言う名の小さな仮想空間的箱の中より、

2人には見知らぬ国の太陽と緑、街の雑踏の中で腕を揮う姿が似合う。

出来た料理も断然美味しそう。

例えるなら、家で食べるより運動会か遠足で食べるおにぎりの方が格別旨くなるあの感触。

そんな旨い外メシを知ってしまった2人。

一度籠から飛び出た鳥は本能という名のバイクで走り続けるのかな。

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