第16回

文化がバラエティなのだ 『The Culture Show』

*2006-2007年 英国のfree週刊紙「UK JACK」にて掲載されたものです。写真は一部加工されています。

「文化ショー」つまらない?奥深い?

『The Culture Show』を直訳してみた。

BBCの総合エンターテインメント情報番組のタイトルだ。

あなたはどう感じただろう。

「文化」なんて言葉が出てきたら何でもアリ。

歴史モノ系の番組ともとれる。

内容だって硬軟、変更可能。

テレビッコは「つまらい」が、故に「贅沢」だと思った。

ストレートすぎて逃げ場が無い。

中身を充実させねば視聴者は納得しないタイトルだからだ。

『The Culture Show』はそんな視聴者の贅沢な期待に答えてくれる番組だ。

毎回、音楽・映画・演劇etc…

とにかく現在の”芸事”に関する情報を数組、

アーティスト側のドキュメンタリーやインタビューを交え、

批評家のコメントも付けて紹介してくれる。

正に“総合ART雑誌”的番組。

まず、それぞれの話題がコンパクトでいい。

「あ、もうちょっと見せて」という視聴者の心をくすぐりながら、ちゃっちゃと次の話題へ誘う。

それ位で良いのだ。

「音楽情報は欲しいが、映画情報など興味ない」という人は音楽コーナーだけ集中すればいい。

逆の志向の人も然り。

1ジャンルをダラダラ見せるのではなく、

「必要な事だけを密にまとめました。

ハイ、次へ行きます」だから50分見飽きる事がない。

取り上げる話題のセンスも上級。

真のバラエティ番組だ。

バラエティと聞くと、日本では大抵「お笑い中心」と想像されるが、

そもそもVarietyとは多種多様、変化に富むと言う意味。

笑いあれば、シリアスあり、ジャンルも多岐に渡る。

『The Culture Show』 はその要素を満たしている。

例えば、Stand-upコメディの最新情報、

人気DJと世界的有名なバイオリン奏者のドキュメント、

大御所「Mr. Bean」Rowan Atkinsonのインタビュー+最新映画批評、

最後は新人ミュージシャンの歌声を聞かせて終わる。

文化はバラエティに富んでいるからショーになる=「文化ショー」。

日本にも誇るべき文化が沢山ある。

いつからかバラエティ=「お笑い」と誤解される事態になっただけ。

歌舞伎役者と新人お笑い芸人のドキュメンタリー。

小劇場映画批評と大女優のインタビュー。

マイナーだけど質のいい歌手の生歌。

最高にバラエティ。

しかし残念ながら余程上手く仕上げない限り、この列挙だけでは視聴率が稼げないのが日本の現実。

『The Culture Show-Michael Palin Special』で敬愛するMonty Pythonの一員Palinの言った言葉が耳に残る。

「30年以上経つ今も Pythonのコメディとは何だったのかって聞かれる。

このThe Culture Showも、どんな番組だったのか?と後々言われる日がくると思うよ」

文化に富む国を誇るなら「文化ショー」はいつでも創れるはずだよね。

とふと思った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Twitter
Pinterest