EastEnders にみる『渡・鬼』度

夕飯時の住宅街。
流れくる「♪ズン・ズン・ズズズズ タリラリ ランランラ~」の音楽。
おなじみ、BBC が誇る長寿ドラマ「EastEnders」のテーマ曲だ。
1985 年の放送開始以来、21 年間、ロンドンの お茶の間に愛されてきたこのドラマ、
Eastend に住む人々の日常を綴ったものだが、
にわかロ ンドン人のテレビッコはその歴史を知らずとも一 目で
「おお~これはロンドンの『渡・鬼』ではな いか !」と驚愕した。
『 渡 ・ 鬼 』 と は 、 日 本 の T B S が 誇 る 長 寿
「 橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり」である。
何と言っても、3 分に 1 回は繰り広げられる口論、いさかい、痴話げんか。
類いない登場人物 の平均年齢の高さ。
そして、メインシーンがドメスティックなブレックファースト屋かパブという 飲食店がらみの設定。
「East-」のどこをとっても渡・鬼度満点である。
さしずめブレックファースト屋はそのチープさ加減から「幸楽」、パ ブは「おかくら」といったところか。
現シリーズ では、子役から出演のソニア役の彼女がえなり君的存在か。
がんばっても今時のアイドルにな れないその風貌も重なる。
最近の「East-」は、渡・鬼では滅多に見な いエッチシーン ( といってもキスくらい ) も見られるが、
些細な誤解が転がって大きくなる、あるいは、心ない相手の一言で不幸のどん底へ 落ちるといったベタな展開に、
あ~痛い所をついてくるな~感は双方引けを取らない。
さらに、渡・鬼の場合は縁戚、「East-」は同じコミュニティに住む者という間柄だが、
近しいが故に 傷つけあってしまう人間の性も奥深い。
例えば 前出のソニア、パブへ行っては、別れた男と出 くわし、お互い余計な言葉を口走る。
世間が狭 いからこそ起こりえるシチュエーションと、親密 になるほど誤解する相手との距離感。
それは日 本もイギリスも同じ、日常生活で陥りがちなトラップだ。
そのトラップにハマった時、学習して成長するか、同じ場所に居続け、似たような罠にまた捕まるかは当人の問題。
しかし人間は 幾つものそういったトラップをくぐり抜け、大 人になり、また新たなトラップと格闘し続ける 生き物のように思う。
だからこそ、普遍的なその様を描いた両ドラマは“ 長寿 ”という冠を頂 く事ができるのだろう。
“ この世はトラップに満ちあふれている ” そんな当たり前のことを手を変え、品を変え、次々と画面に送り続ける両ドラマ。
テレビ ッコとしてはいつか橋田 & 石井ふく子先生と「EastEnders」脚本家 & プロデューサー両雄に“
長寿ドメスティック人間ドラマ ”について対談していただきたいところである。
