第1回

EastEnders にみる『渡・鬼』度

*2006-2007年 英国のfree週刊紙「UK JACK」にて掲載されたものです。写真は一部加工されています。

夕飯時の住宅街。

流れくる「♪ズン・ズン・ズズズズ タリラリ ランランラ~」の音楽。

おなじみ、BBC が誇る長寿ドラマ「EastEnders」のテーマ曲だ。

1985 年の放送開始以来、21 年間、ロンドンの お茶の間に愛されてきたこのドラマ、

Eastend に住む人々の日常を綴ったものだが、

にわかロ ンドン人のテレビッコはその歴史を知らずとも一 目で

「おお~これはロンドンの『渡・鬼』ではな いか !」と驚愕した。

『 渡 ・ 鬼 』 と は 、 日 本 の T B S が 誇 る 長 寿

「 橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり」である。

何と言っても、3 分に 1 回は繰り広げられる口論、いさかい、痴話げんか。

類いない登場人物 の平均年齢の高さ。

そして、メインシーンがドメスティックなブレックファースト屋かパブという 飲食店がらみの設定。

「East-」のどこをとっても渡・鬼度満点である。

さしずめブレックファースト屋はそのチープさ加減から「幸楽」、パ ブは「おかくら」といったところか。

現シリーズ では、子役から出演のソニア役の彼女がえなり君的存在か。

がんばっても今時のアイドルにな れないその風貌も重なる。

最近の「East-」は、渡・鬼では滅多に見な いエッチシーン ( といってもキスくらい ) も見られるが、

些細な誤解が転がって大きくなる、あるいは、心ない相手の一言で不幸のどん底へ 落ちるといったベタな展開に、

あ~痛い所をついてくるな~感は双方引けを取らない。

さらに、渡・鬼の場合は縁戚、「East-」は同じコミュニティに住む者という間柄だが、

近しいが故に 傷つけあってしまう人間の性も奥深い。

例えば 前出のソニア、パブへ行っては、別れた男と出 くわし、お互い余計な言葉を口走る。

世間が狭 いからこそ起こりえるシチュエーションと、親密 になるほど誤解する相手との距離感。

それは日 本もイギリスも同じ、日常生活で陥りがちなトラップだ。

そのトラップにハマった時、学習して成長するか、同じ場所に居続け、似たような罠にまた捕まるかは当人の問題。

しかし人間は 幾つものそういったトラップをくぐり抜け、大 人になり、また新たなトラップと格闘し続ける 生き物のように思う。

だからこそ、普遍的なその様を描いた両ドラマは“ 長寿 ”という冠を頂 く事ができるのだろう。

“ この世はトラップに満ちあふれている ” そんな当たり前のことを手を変え、品を変え、次々と画面に送り続ける両ドラマ。

テレビ ッコとしてはいつか橋田 & 石井ふく子先生と「EastEnders」脚本家 & プロデューサー両雄に“

長寿ドメスティック人間ドラマ ”について対談していただきたいところである。

*2006-2007年の情報です。2021年4月、橋田壽賀子先生がご逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

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