第3回

Dragon’s Denに学ぶ負け犬の逆襲術

*2006-2007年 英国のfree週刊紙「UK JACk」にて掲載されたものです。写真は一部加工されています。

『Dragon’s Den』 の構図は経済的勝ち組と負け組の対面である。

日本の『¥マネーの虎』が異国の地でよくぞここまで成長してくれたと

テレビッコは五木ひろしさんのように目を細めた。

しかし、英国版『¥マネーの虎』改め『Dragons’ Den』は日本ほど生温くない。

コンセプトは同じ。

ビジネス界の成功者がベンチャー事業主の投資依頼に乗る否かの商談ドキュメント。

日本では見込みのある依頼者にその場で札束を提示するか、

お試し期間で成果を上げるべく頑張りたまえ!と励ましたりもする。

が、『甘い!』とイギリスのDragonsは一喝するだろう。

事実、彼らがまず口にするのが『君の会社(or株)の40%のシェアくれる?』。

つまり、依頼者の事業の半分近くの権利を要求するのだ。

トモすれば共同事業主という名の乗っ取りに近いニュアンスすら感じる。

ご存知の方も多いと思われるが、コト欧米企業では株主が一番のpriorityを持つと言われる。

故にDragonsは成功の余地があるアイデアに対し主導権を握りたがるのだろう。

そうは言っても、見ての通り、現実的に権利シェアの段階まで進む依頼者など滅多にいない。

大方は蛇に見込まれたカエルのごとく、ビジネス勝ち組の前で首を竦める。

素晴らしいプレゼンテーションをしても詳細を突っ込まれた途端にしどろもどろ。

勝ち誇った様に『I’m out』というDragonsか、脂汗をにじませ悲壮感を露にする依頼者か、

どちらを見て楽しむかは視聴者であるあなた次第。

しかし!テレビッコは別な所に『Dragons’ Den』の楽しみを見つける。

そもそも資金が足りない、商才が乏しいからDenに来ている訳で、この時点で依頼者は明らかに経済的な負け組。

それが突如、立場が逆転する時がある。

“負け犬の逆襲”の瞬間だ。

例えば、Dragons’が案の定“40%のシェア” を提案する。

『あなたのアイデアに私の商才を足せばこのビジネスは必ず成功する』と。

ここで、ある依頼者はきっぱりとそのオファーを断る。

『私のアイデアをあなたに売るつもりはない』。

なんともスカッとする切り返しではないか。

このビジネス案を産んだのは私、その素性を一番よく知るのも私。

そして誰よりも精魂込めて育てることが出来るのも私だ。

そう気付いた瞬間、依頼者は経済的な負け組であったとしても、精神的な負け組ではなくなる。

もはや勝ち組の風格すら持ち始める。

クリエイティブの世界に勝ち組・負け組などという貧しい表現はない。

確かに経済の世界では存在するだろう。

しかし己の企画力、発想力に自負が持てるなら誰だってDragonsになれる。

とテレビッコは信じたい。

*2006-2007年の情報です。

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