【幼稚園選びの~いろは~】
あなたが幼稚園に求めるものは何だろう? 最新の設備や環境、あるいは充実した教育内容、はたまた周囲の評判や伝統といったポピュラリティ? 私は何だったろう。分からず幼稚園選びをしていたと思う。私立にしようとは思っていた。国立はムリっぽいなと。じゃぁ、大学附属? 今から決め込むのもなぁ…。まずは地元。通える圏内。でもママ友なんていないし、地域の幼稚園事情もさっぱりわからない。ならば、とにかく気になるところを片っぱしから訪問しようと決めた。インターナショナル含め、その数10園ほど。何曜日はこちら、何曜日はあちらと一定期間数園のプレ幼稚園に通わせ、公開保育、説明会&見学会etc…あらゆる機会に足を運んだ。 最初のうちは回れば回るほど悩むのかと思いきや、どんどん感覚が研ぎ澄まされ、幼稚園それぞれの特徴が瞬時に掴めるようになり、自然と自分の(親の)肌に合う幼稚園の雰囲気というものが分かるようになってきたのだ。
例えばある幼稚園は、願書提出日に行列ができるほど人気だというので説明会に行ってみた。すると、副園長先生が園の特徴を紹介してくださった。「うちの園では、小学校1年生に必要な読み書きを幼稚園3年間で全て覚えさせます!」とか、「お母様、お父様、PTAのご負担はほとんどありません! 幼稚園に来ていただくのは年に3回ほどです。」というのを売りにしていた。う〜む。随分親に都合の良いことばかり言う幼稚園だなぁ…まるで保育園の様。ある幼稚園は真逆で、「我が園にバスはありません。保護者の方が毎朝徒歩で送り迎え願います。そして毎日手作りのお弁当を持たせてください。」おぉぉぉぉ毎朝お弁当&徒歩通園かぁぁあ! それは大変だぁ、とか。あとは、先生方がやたら若くてキャピキャピしている、付き合いづらそう。場所が駅からすごーーーく遠い。可もなく不可もなし=魅力もなし。etc…まぁ、10園10色。幼稚園と一口に言ってもホントに色々ある。人気の高い園は願書が集中し、定員オーバーになれば当然面接で落とされる。最終的にどの園の面接を受けるべきか。消去法で候補園は減っていき、願書提出は3園に絞られた。どこも徒歩圏内。1つは、かの毎日手作りお弁当幼稚園で、歴史があり評判も良く、最近園舎を建て直したばかりでプールもある。もう1つも地域では有名な幼稚園で、お教室に必ず生ピアノがあり、近所の芸術大学と共同で放課後のクラブ活動をしていると言うユニークな園。そして最後が、一番古くて伝統があるが、延長保育などなく、ちょっとお作法に厳しいよと噂のお寺の幼稚園だった。
東京都の私立幼稚園の入園面接日は、だいたい11月1日に集中している。午前と午後に降り分けたとして掛け持ちできるのはせいぜい2園だ。運よく3園中ひと園、生ピアノ&クラブ活動が盛んな幼稚園が11月1日より先に面接だったので最終候補の3園全ての面接を受けることが可能だ。そして、最初に面接を受けた園は想像通りセンスが良く活気があり、園長先生もやる気に溢れていて好印象。難点は園庭が狭いくらい。ここなら息子を預けて良いかも…心が半分決まりかけていた。何より芸術大学の学生さんと、放課後に音楽やお絵かきクラブがあるのが魅力だった。でも合格が決まった訳ではない。まだ2園可能性があるのだから、願書を出して面接を受けよう。11月1日の面接は願書提出順となるので、手作りお弁当幼稚園に朝イチで願書を出し、お寺の幼稚園にはわざと遅く提出した。その時だった。まさに第六感というか、願書を持って幼稚園に入った瞬間に感じるものがあった。『アレ? なんか違う…ここじゃない…』と、『あ、私、この幼稚園に通うわ 』というはっきりとしたインスピレーションが。
結論から言えば、息子たちが通ったのは、たった1度説明会に行っただけの、お寺の幼稚園である。
ことの顛末はこうだ。プレ幼稚園に何度も通わせ園長先生とも親しくなり、園舎が新しくなってプールまで付いた評判の良い幼稚園。実は主人の出身園で、園長先生は主人の恩師、親戚一同私たちの息子もそこへ通うのだろうと思われていた。毎日手作りお弁当だが頑張るしかない。母親の愛情を注ぐ事こそ幼児期には必要という方針に従おうと腹を括った。もうほぼ決定と思われていたその幼稚園が….私の直感では違ったのだ。園舎が新しすぎたのか? 見学会で玄関に入った瞬間、真っ白い壁に丸い柱が、幼稚園というより病院に来たような感覚に襲われた。そして願書提出の列に並んでいた時、朝早くだったからか、まるでパジャマのようなスウェット姿の父兄を見てしまった。あぁ、この方とは一緒に登園できない…。まだ願書提出の段階なので、その方が必ず入園されるとは限らないいし、こちらも合格するかはわからないが、なぜか興醒めしてしまったのだ。『どうしよう。どうしよう…ココじゃない気がする、というか…違う…』 意気揚々と早朝に願書を出しに行った第一志望園だったが、願書提出の段階で私の心の中では消えていた。
一方、最初はほとんど関心を持っていなかった、ちょっと厳しいと噂のお寺の幼稚園。決まった宗派に拘りはないので洋物・和物問わず、宗教系の幼稚園とはどんなものだろうか? と説明会に顔を出してみただけだった。ところがである。説明会でお遊戯室に入った瞬間、何とも言えない安心感を覚えた。周りに集まっていた人たちの雰囲気もなぜか心地よかった。『何だろう。この場所、気に入ったなぁ』お香の匂いが懐かしさを誘ったのか、園庭が広かったからなのか。訳もなく、微かな感触だけで最終候補の3園に残したのだ。どちらかというと、先に面接した芸術性の高い幼稚園に心は傾いていたし、朝イチで出した幼稚園の面接時間次第では、2園目に間にあわず欠席で失格となる可能性だってあった。それでも、不思議なことにスルスルっとうまく面接時間は11月1日の午前と午後に分かれ、3園目は最後の面接と言うこともあり、私たち親子はリラックスして先生と会談することができた。何より、願書を出しに行った瞬間既に、この場所良いなぁという予感が『ココだ!!』という確信に変わっていた。「この幼稚園に絶対合格するわよ」11月1日の帰り道、私は主人にそう宣言していた。
結果、息子は3園とも合格した。今でこそ、少子化や保育が手厚い子ども園の増加により幼稚園に通う子が少ないので、合格・不合格のある幼稚園は限られていると思う。少し前までは、まだちょっと人気のある幼稚園には応募が集中したので、面接を受けたらドキドキして合格を待ったものだった。そして、いざ3園から1園を決めるにあたって、私は自分の直感に従った。何度もプレに通った馴染みの幼稚園ではなく、クラブ活動が魅力の幼稚園でもなく、たった1度説明会に行っただけのお寺の幼稚園にしたのだ。私が幼稚園に求めたものは何だったのか? それは、”ここなら、息子と一緒に通える”と言う安心感だった。もの凄く現実的に、物理的に考えたなら、プールがあって親子2代同じ幼稚園は理にかなっている、芸術活動が盛んな幼稚園だって申し分ない。なぜ縁もゆかりもない、厳しいと噂のお寺の幼稚園に? と問われたら、なぜでしょう、なんとなく…としか言いようがない。ただ、確実なのは、10園近く自分の足で訪問して、子供を連れてプレ幼稚園に通い、体験入園し、説明会へ行き、とことん隈なく気になる幼稚園を巡った上での直感だったから悔いがない、と言うことだ。そして実際通わせて、自分も一緒に通ってみて、直感は間違っていなかった。とても素敵な幼稚園生活が送れた。
あなたも幼稚園選びに迷ったら、百聞は一見にしかず。足を運んでみるしかない。必ずなんらかのインスピレーションが働くはずだ。その場で直ぐにピンとこなくとも、後になってジワジワきたり、どうしても頭から離れない幼稚園が現れてくれたらビンゴ! ご縁があるはずである。逆に、何度も何度も足を運んでいるのに、私のようにある一瞬の印象だけでスパッと気持ちが離れてしまうことだってあるのだ。前評判や周りからの推薦、憧れなどでどうしても行きたい園があったとしても、ココしかないと決めつけず、11月1日まで存分に悩んでみて欲しい。案外、思わぬサードパーティが主役に躍り出ることだってあるかもしれない。そして、心に問いてみて欲しい。自分の子供が、自分自身が、幼稚園に求めるものって結局なんだろう? って。